みけ
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物語は5/9 対ドイツ政策の責任からくるチェンバレン首相への退陣要求から始まる。 労働党が保守党と大連立を組む条件としてチェンバレンの退陣を望んだのだ。 世論も議会も強い首相を求めている。チェンバレンは外相のハリファックスを後任に臨んだが、労働党と世論が望んだ人物は別にいた。 それこそがチャーチルであった。 チャーチルはこの当時、保守党であったが海軍大臣時代のガリボリの敗戦などの失策などもあった。 しかし国難を前にすべきことを断行できる人物が大英帝国には必要な時である。 ただ映画の中ではジョージ6世はあまり浮かぬ様子。 組閣するも3党(保守党・労働党・国民党)による戦時連立政権。 しかも後手後手に回っている状況。 内部でも対ドイツ和平派が暗躍するし、そもそもチャーチル自身が朝から晩までスコッチやワインを飲んでいることにいい印象もなく、かつて野党に鞍替えしていたこともしこりになっている。 癇癪もちで戯曲家な印象を持たれて大言壮語。感情の抑えが効かないのは親譲りだと自他ともに認める男。 そんなチャーチルが戦闘機を馬で輸送というアメリカの大統領の話から、 ダンケルク撤退戦の国民の小型船徴用というダイナモ作戦を思いつく。 ダンケルクから撤退するまでの間、カレーで包囲された4000人の友軍の奮闘、 そして犠牲。 そのあとでドイツと和平を迫られる葛藤。迷い。 絶対に間違ってると分かっているのに屈しなければいけない現実。 そんな中、突然部屋に訪れた国王ジョージ6世。 彼に今何を思うのか尋ねられて、 勇敢に戦った国は立ち上がれるが、逃げた国は立ち上がれない。 しかしすでに内閣に徹底抗戦を叫ぶ者はほとんどいない。 では私はどうするべきなのか そんな心の内側をさらけ出したチャーチルにジョージは歩み寄り支持を表明する。 世界で一番孤独な立場である国王と首相は敵と戦うことを決断したのである。 車で移動する最中、首相就任の日に比べて人々の表情は暗い。 信号で止まった車。そしてチャーチルは国民の声を聴くために生まれて初めて地下鉄に乗る。 (冒頭の地下鉄話はこのためにあった) そこで彼は周囲の人に訪ねる。 私は迷っている。このままドイツと和平してもいいか? 応えは否。断じて否。(never) 市民は、イギリスは戦うことを望んだのだ。 そして迷いを振り切ったチャーチルは演説を行う。 『我々は海岸で戦う、我々は水際で戦う、我々は野原で街中で戦う、丘で戦う。我々は決して(never)降伏しない』 ノーベル文学賞を受賞するほどの彼ならではの名文である。 映画特有の脚色や事実とは異なる場面もあるが(ハリファックスやヒトラーとの交渉、地下鉄の場面など) この映画は苦難に立ち向かう一人の男の勇気や決断を見届ける映画であった。 (ダンケルクとセットで見ると、こちらでは国家運営や世界情勢、あちらでは国民がどのように戦争に向き合ったかが感じられるのでいいと思う。)